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若林整形外科 - 新建築7906 |
若林整形外科は、大阪から西北へ35kmほど、中国自動車道を利用して約1時間の三田市にある。完成すれば東洋一の規模になる北摂ニュータウンが隣接しており、人口増加のはげしいところである。一方 旧市内には以前のままの田園風景が点在しており、ここもそのひとつである。敷地は道路に約60度の角度で接して、なおも中央あたりから奥へ弓状に湾曲している。それゆえ平面形は比較的早く決定された。まず診察スペースを扇形にして敷地が湾曲している部分に配し、付室スペースと待合室とを半円形で結合させる構成とした。そして3つのスペースが重なり合う位置に円柱が立ち、待合と受付がそれをかこみあうようにして向かい合っている。診察室・物療宝は受付の左右からアプローチされ、円柱より90度の角度で拡がって6つの節点をもつ多角形になっている。待合室とはコア壁に沿ってラウンドすることができ、有機的である。また各節点と,コア壁をつなぐ梁は勾配にかけられ打放しコンクリートによって一体化されて、ちょうど傘の骨のように見える。その中央の梁がコア壁を突き抜けて外部へ伸びてソリッドに空を切り、中心点と勾配屋根を強調している。その形態は遠く離れても視覚でき、これといった主張をもたない風景のなかで、方形と多角形、円形の組合せからなる幾何学的構成は、見る位置・角度によって変化し効果的である。都市のなかで建築はますます内向化していくが(せざるを得ないが)、ここではまだ外部環境と係わりあえる原風景があり、建築本来の大切なものを活性化させる、ある種の感動があった。それらと対応しながら地域の人びとに身近に頼られる医院として、建築をシンプルに力強く表現して、美しく存在させたかった。(松本直高) |
発行=新建築社(03-3811-7101代 |
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